Be yourselfのこだわり|コラム1
2028年ストレスチェック義務化をどう迎えるか?
50人未満の中小企業が今から始めるべき「形骸化させない」備え方
はじめに:法改正のニュースを「ただの事務負担」で終わらせていませんか?
労働安全衛生法の改正に伴い、これまで50人以上の事業場にのみ義務付けられていた「ストレスチェック制度」が、2028年4月よりすべての事業場(50人未満の小規模事業所を含む)へ拡大適用されることが決まりました。
この報道を目にした中小企業の経営者さまの中には、次のような懸念を抱かれた方も多いのではないでしょうか。
「また国から義務やコストが増やされるのか」
「総務や人事の専任担当者がいないのに、どう運用すればいいのか」
「そもそも社員が数人〜数十人しかいない職場で、テストのようなアンケートを実施して何の意味があるのか」
人手不足が深刻化し、日々の現場業務や資金繰り、顧客対応に追われる経営者にとって、新たな義務化が「重荷」に見えるのはごく自然なことです。しかし、結論から申し上げます。この制度義務化を単なる「法令遵守の書類仕事(ペーパーワーク)」としてやり過ごすか、それとも「社員の離職を防ぎ、組織を盤石にする経営戦略」として活用するかで、数年後の企業の生存率は大きく分かれます。
本稿では、行政保健師として30年、自治体保健所の副所長として数々の組織・労働現場を見守ってきた専門職の視点から、50人未満の事業所が今から無理なく取り組むべき準備と、形骸化させないための実践法を解説します。
1. なぜ今、50人未満の事業場にストレスチェックが求められるのか
大企業に比べて、中小企業や小規模事業所は「社員同士の距離が近く、アットホームである」と言われることがよくあります。経営者ご自身も「毎日顔を合わせているから、あいつの調子は声を聞けばわかる」と感じているかもしれません。
しかし、現場で多くの面談を行ってきた保健師の実感として、少人数の職場ほどメンタルヘルスの問題は潜在化しやすく、表面化したときには手遅れになりやすいという実態があります。
- 代わりが効かないプレッシャー 少人数組織では一人ひとりの業務責任が重く、一人が倒れると事業が停滞します。その重圧から、不調を感じても周囲に言い出せない社員が少なくありません。
- 人間関係の逃げ場がない 部署異動などの選択肢が少ないため、上司や同僚との相性問題、コミュニケーションのズレが生じた際に、ストレスを逃がすルートが閉ざされてしまいます。
- 経営者への遠慮と忖度 「社長が忙しそうにしているから」「会社が大変な時期だから」と、優しい社員ほど我慢を重ね、限界に達したある朝、突然「退職届」を出してしまう事例が後を絶ちません。
中小企業における従業員1名の休職・離職は、大企業の数十名分に匹敵する大打撃となります。法改正は「負担の押し付け」ではなく、「大切な少数精鋭の組織を守るための早期警戒システムを配備するチャンス」と捉えるべきなのです。
2. 中小企業が直面する「ストレスチェック導入の3大ハードル」
50人未満の企業がストレスチェックを導入しようとする際、必ずと言っていいほど直面する壁が3つあります。
① 誰が担当するのか(専任者不在の壁)
大企業のように人事部や総務課、専属の産業医がいるわけではありません。経営者自身や経理担当者が兼務することになりますが、日々の実務に追われ、制度設計や規程づくり、実施体制の構築に割く時間がありません。
② プライバシー保護の難しさ(個人情報漏洩への不安)
ストレスチェックの結果は極めてセンシティブな個人情報です。労働安全衛生法上、本人の同意なしに結果を会社(経営者を含む)が知ることは禁じられています。「社長が結果を見ているのではないか」「正直に答えたら査定に響くのではないか」という疑念を社員が抱けば、全員が「問題なし」と回答し、制度は即座に形骸化します。
③ 「やって終わり」になる無力感(活用方法の不在)
集計したスコアを見て、「高ストレス者が2名出たが、どう声をかけていいかわからない」「医師の面談を案内したが本人が拒否した」という事態に陥り、費用と労力だけが無駄になるパターンです。
3. 2028年に慌てないためのロードマップ:今すぐ始めるべき準備
2028年4月の施行直前になってから業者を探し、慌てて規程を作成しようとすると、外部ベンダーのキャパシティ不足や割高な駆け込み需要に巻き込まれる恐れがあります。余裕を持ったステップで進めることが成功の秘訣です。
導入までの3ステップ
- ステップ1:社内ルールの整備(衛生委員会または労使協議、実施規程の策定)
- ステップ2:実施体制の決定(実施者=外部専門職の選定、Web受検環境の整備)
- ステップ3:テスト導入と運用の定着(2028年までに1〜2回の試行・改善)
早期に準備を始める最大のメリットは、「自社の社風に合った伴走者(保健師・医師など)をじっくり選定できる点」にあります。単にシステム画面を提供するだけのITツールではなく、自社の実情を理解し、経営者の想いと社員の心情の橋渡しをしてくれる専門職と出会っておくことが不可欠です。
4. 形骸化させないためのカギは「保健師の伴走」にある
ストレスチェックを真に組織改善のテコとするためには、「受検して点数を出す作業」と「その後の対話」を切り離してはいけません。
ここで力を発揮するのが、看護・公衆衛生の国家資格を持ち、労働者の心身のケアを専門とする「保健師」の存在です。
- 第三者の守秘義務による安心感 保健師は法律で厳格な守秘義務を負っています。経営陣から独立した立場で結果を取り扱い、社員に対して「結果は社長にも一切漏れません」と直接説明することで、社員は初めて本音の回答を記入できます。
- 高ストレス者への敷居の低いアプローチ いきなり「産業医(精神科医)の面談を受けてください」と促されても、多くの社員は「精神疾患の烙印を押されるのではないか」「大げさにしたくない」と拒否します。しかし、「普段の健康相談や生活習慣を振り返る保健師面談」であれば、抵抗感なく受けることができます。
- 経営者へのフィードバック(集団分析の翻訳) 個人情報を完全に保護した上で、「組織としてどの部署・業務に負荷がかかっているか」「どのような改善策を講じるべきか」を行政経験や組織マネジメントの観点から経営者に具体的に還元します。
まとめ:制度義務化を「選ばれる会社」への変革機会に
これからの時代、採用市場において「従業員の心身の健康を本気で考えている会社かどうか」は、求職者が最も注目する指標の一つです。
2028年の義務化をただ待つのではなく、今から一歩を踏み出すことで、「当社は社員一人ひとりの体調とメンタルを大切にしている」という明確なメッセージを社内外に発信することができます。
Be yourselfでは、行政保健師30年・保健所副所長としての組織運営経験を活かし、小規模事業所さまの社内規程づくりからWeb受検、個別面談、職場改善の提案まで、ワンストップで伴走いたします。「何から手を付ければいいかわからない」という段階から、どうぞお気軽にご相談ください。
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